遠い遠いワンコ星では、ワンコたちが楽しく仲良く暮らしている。犬絨は、そのなかのごく普通の一匹だ。
この星の古い言い伝えには、「人間」という伝説の生き物が登場する。なんでも、ワンコたちの最高の相棒なのだという。まだ学生ワンコだった犬絨のいちばんの願いは、将来稼いだお給料で人間のフィギュアを買い、自分の小さなおうちに飾ることだった。ワンコ学院を卒業した犬絨が、ある日、18社目の面接に向かっていると、突然、道ゆく通行犬たちがどよめいた。振り返ってみると、なんと巨大な人間のスタンドパネルをくわえたワンコがいるではないか! あまりに見とれていた犬絨は、足を踏み外して真っ暗な深い穴へと落ちてしまった。下水道のマンホールの蓋を押し上げて、ようやく日の目を見ると、なんと周りを行き交っているのは、生身の人間たちだった。
犬絨が開いた口のふさがらないワンコ状態から立ち直る間もなく、肉球スマホにメッセージが届いた。「19社目の面接のご案内。VirtuaReal」
VirtuaRealに加わったことで、犬絨はたくさんの人間に会えるようになったけれど、それとともに悩みもやってきた。ワンコ星では、ソーダクラッカーに穴を開けることも、チップスアホイにチョコチップを散りばめることも、高い技術を要する立派な仕事で、犬絨はこの二科目でどちらも満点を取った優等生だった。この人間の世界でもきっと大活躍できると思い込んでいたのに、まさかどちらもまったく役に立たないなんて。(ワンコしょんぼり.jpg)
「人間! どうしたら、みんなに注目してもらえて、好きになってもらえるの? ワンコに教えてくれないかワン?」
これからの活躍に、どうぞご期待ください。