「羽啾! 地球からやってきた宇宙人だよっ!」
道を歩く羽啾の後ろで、ポニーテールが左右に揺れている。道ゆく人々を眺めながら、彼女は思わず首を振ってため息をついた。「はぁ、かわいそうな地球人。宇宙スパイの羽啾がこんなに何年も地球に潜伏してるのに、誰ひとり気づかないなんてね。よし、今日の目標は、通信電波がいちばんよく入る場所を見つけること、に決定!」
突然、空がどんよりと暗くなり、不気味な緑の光が地上一面に降り注いだ。遠くの高層ビルの屋上に、鮮やかな緑色のビックリマークがゆっくりと浮かび上がる! なのに、周りの通行人には見えていないようだ。
羽啾の目がぱっと輝いた。「わあっ、宇宙のお偉いさんがついに連絡をくれたんだ!」だが、すぐに思い直す。「待って、地球人が仕掛けた罠だったりしないよね。まずは近くのどこかに潜伏しとこっと。Let’s goooooooo~」彼女はぴょんぴょん跳ねながら、近くのレストランへと楽しげに駆け込んでいった。
ところが、見晴らしのいい窓際の席はすべて埋まっていた。羽啾は仕方なく、話の通じそうな客を適当に見繕った。
「こんにちは! あなたの席を譲ってください。わたし、向かいの会社のてっぺんまで上り詰めたいんです」羽啾は自信満々に言った。
スーツ姿のその客は驚いた顔をしたかと思うと、口の端をゆがめてニヤリと笑った。「初対面でそれほどの大志を? いいだろう、採用だ!」そう言うなりパチンと指を鳴らすと、背後から人の波が押し寄せ、羽啾を担ぎ上げて会社へと運び込んでいった。
「屋上に行きたいって意味! 屋上だってばー!」羽啾は悲鳴を上げた。
「わかってるよ」その客は、誠実そのものの笑顔で答えた。
これからの活躍に、どうぞご期待ください。