十六蛍は画面に表示された「任務完了」の通知を見つめ、無表情のまま報告画面を閉じた。
物心ついたときから、彼女はひとりで森をさまよっていた。毛色があまりにも目立つせいで、アライグマの群れの中で浮いた異端者となり、森の蛍だけを友とするしかなかったのだ。夜が更けて静まり返ると、彼女はいつも体を丸め、ふさふさの大きなしっぽで自分をぎゅっと包み込む。自分がどうやってエージェントになったのか、十六蛍は実はよく覚えていない。ただわかっているのは、果てしない忙しさで日々を埋め尽くしてこそ、行き場のない余計な思いを押し流せるということだけだ。
直近の任務の舞台は、とあるメイド喫茶だった。動きにくい異国の衣装に無理やり着替えさせられ、腹をくくって丸三か月、笑顔の接客マナーを身につけた。勤務中は、組織から命じられた「人間観察任務」をひそかにこなしつつ、彼女の耳やしっぽを見かけるなり「かわいい!」と声を上げる客たちの相手もしなければならない。ところが、よりによってクールすぎる雰囲気と、ふわふわで触り心地抜群のしっぽのせいで、かえって店のナンバーワンメイドになってしまい、危うく次期店長に任命されるところだった。
任務が終わるたびに、彼女はいつもの癖で、しっぽで自分を包み込む。こんな日々、いったいいつになったら終わるのだろう? 小声でそうぼやきながら、届いたばかりのメールを開く——「次の任務:VirtuaRealに潜入し、生態調査を行うこと」。添付ファイルには、重点的にマークすべきメンバーの資料まで、ご丁寧に付いていた。ゼリー好きの平凡な女子高生に、ふわふわでかわいいうさ耳の少女、そして空から降ってきた、頭上に天使の輪を浮かべた……人?
十六蛍はいつもどおり無表情のまま任務を引き受けた。ただ、心の奥底にふと、なぜかこんな考えがよぎった。今回の任務は……もしかしたら、そんなにつらくないかも?
これからの活躍に、どうぞご期待ください。