小松緑は自己紹介シートを前に、いつまでたってもどう書き出せばいいのかわからずにいた。
「Sedum multiceps、中国語の正式名は小松緑。ベンケイソウ科マンネングサ属の植物で、多肉植物。草丈は低く……」
違う違う、これじゃ植物学の試験の答案だ。
「みなさん、こんにちは〜。小松緑Viridisです。みなさんのインターネットの鉢植えになれたらいいな〜」
……こんなしゃべり方、するわけないし。
「こんにちは、小松緑です。ヒト科ヒト属ホモ・サピエンス、正真正銘の人間です。友達になってください」
……
しばしの沈黙のあと、小松緑は黙ってペンを置き、ベッドにばったりと倒れ込んだ。
小松緑は昔から同級生たちと付き合うのが苦手で、よくひとりで山に出かけては、草花に話しかけていた。ときどき、大好きな植物の話を周りの人にしてみることもあったけれど、みんなはいつまでたってもちっとも興味を示さない。それどころか、「植え込みのどの草なら食べられるの?」なんて変な質問をしてきたり、「頭に目玉焼きをのせて、イタチのネクタイを締めてるなんて、どういう趣味?」とからかってきたりするばかりだった。
現実でのコミュニケーションで壁にぶつかってばかりの小松緑は、とうとうネットで友達を探すことにした。VirtuaRealに入れば、すんなり友達ができて、大好きな植物の小話もたっぷり語れるようになるかもしれない——彼女はそう考えたのだ。
これからの活躍に、どうぞご期待ください。