見知らぬ街の路地の奥に、古びた小さな本屋がある。店主は枝菫という名の少女だ。
店に入ってしばらく過ごすと、ほどなくして、どうもこの場所は様子がおかしいと感じるだろう。店内に飾られたつる植物は、まるで意思を持っているかのように、ゆっくりと人のほうへ伸びてくる。同じ場所に立って長いこと本を読んでいようものなら、つるがこっそりあなたの足首に絡みついてくることさえある。
不思議に思って、どういうことか店主を呼んで聞こうとしたとき、あなたはようやく気づく——枝菫もまた、決して普通の人間ではないのだと。
「あなたの後ろで動いてるそれ……しっぽ? それとも……」
もしそう尋ねたなら、気をつけたほうがいい。彼女はあなたの目の前までぐっと身を寄せて、触ってみないかと、にこにこしながら聞いてくるはずだから。
うーん……正直に言うと、このお誘いを断るのはなかなか難しい。
けれど、本当に手を伸ばして触れたその瞬間、ひんやりとして柔らかなその「しっぽ」が、たちまちあなたの腕に絡みつく。彼女がその気になれば、あなたはあっけなくバランスを崩して、彼女の腕の中に倒れ込んでしまうだろう。
こうして聞くと、枝菫ってちょっと意地悪だと思う?
でも、知ってしまったら——彼女が代々受け継がれてきた家の本屋を守るため、店番をしながらアルバイトを二つ掛け持ちして、妹を育て上げてきたことを——少なからず胸がちくりと痛むはずだ。
それなら……たまに彼女に絡みつかれるくらい、別にどうってことないよね。
これからの活躍に、どうぞご期待ください。