千幽は人間の世界に戸惑ってばかりいる。一に人間を恨まず、二に世をすねず、三に金目当てで人をあやめず。分をわきまえておとなしく幽霊をやりながら、ただ人と普通におしゃべりして、自分で思いついたイタズラのアイデアを披露して、友達をたくさん作りたいだけ——それの何がいけないというのだろう? ところが彼女の行く先々では、決まって背筋も凍るような恐ろしい噂が立つ。「鏡の中の顔芸女」「えーんえーんと泣くクマのぬいぐるみ」「耳が腐りそうな曲をひとりでに奏でるピアノ」といった具合だ。こうした噂に、頑張り屋の千幽はちょっぴり妙な快感を覚えつつも、すっかりしょげてしまう。日に日に顔がゆがんでいく彼女は、自分の将来がますます心配になっていった。あの手この手で方法を探し回った末、千幽はある黒髪ツインテールの女性から一台のスマホを手に入れる。外の世界とまともにやりとりができるスマホだ。ただしその代わりに、VirtuaReal所属の配信者になるという契約を結ぶことになった。やるべきことはどうにも面倒そうだが、少なくとも今の彼女は、身のまわりのあらゆるものと触れ合えるようになった。何も持たない彼女にとっては、それだけで十分なのだ。
これからの活躍に、どうぞご期待ください。