かつての田野柴は、犬組のために働くのは楽しいことだと思っていた。気の向くままに仲間たちとダンスホールへ繰り出してはタダで踊り明かし、目覚めれば最高にワイルドで熱い音楽が聴こえてくる。ちょっと手を伸ばせば、他人が欲しくても手に入らない有料コンテンツにだって触れられた。そんな暮らしは素晴らしかったが、日に日にやせ細っていく自分の姿とは、あまりにも対照的だった。そしてある日、鏡を見た彼は悟った。人のために働くくらいなら、自分のために働いたほうがいい——そのことを痛いほど思い知った田野柴は、ひそかに自分の勢力を築き始め、その一派を「柴組」と名づけた。しかし、勢力の拡大は遅々として進まず、地盤の弱い自分では、犬組とのシノギの奪い合いで痛い目を見るに違いないと気をもんでいる。腐敗し堕落した犬組を短期間で打倒するのは、自分ひとりの力では難しいと痛感しているのだ。今の彼は喉から手が出るほど人手を欲しており、VirtuaRealとの提携も、その手段のひとつにすぎない……のだが、側近たちの話によれば、本人はすっかりそれを楽しんでいるらしい。先方の、とある黒髪ツインテールの社長と何度も話し合いを重ねるうちに、彼は自分の新たな身分を完全に受け入れてしまったのだ。だが、それの何が悪いというのだろう? 少なくとも今、柴組に加わった志ある男女たちは、自分たちの親分の、より「かわいい」一面を見られるようになったのだから。
これからの活躍に、どうぞご期待ください。