もし貴族の家に生まれていなかったら、花留ほどの天然ボケの女の子は、そこらじゅうに湧いてくる怪しいおじさんに二言三言でとっくに騙されて連れ去られていただろう。いや、彼女をかどわかそうと企む連中はさておき、少女の花畑からこっそり花を摘んでいきたいだけのうぶな少年たちにさえ、花留はいいように振り回されてしまうかもしれない。煩雑な貴族の教養課程の合間に、花留は隅っこで縮こまって動物たちにそっと語りかけていたかと思えば、クチナシの花を掲げて「最高のジャスミンを育てた」と声高に叫んだりもする。大勢の使用人にかしずかれているこの少女は、外の世界のことをほとんど知らない。だから、周りからひそひそとツッコまれていることが不思議でならなかった。「世間知らず」って何のこと? 「いつも変なことを言う」って、どういうこと?……使用人たちはびくびくするばかりで答えようとしない。対等な立場の友達になら、自分の問題を直してもらえるかもしれない? そんな思いを胸に、花留は数か月かけて配信カメラに目線を合わせる練習を重ねたのち、ついにデビューへの道を歩み始めたのである。
これからの活躍に、どうぞご期待ください。