世界の暗がりには、夢を糧とする妖怪が棲んでいる。庫拉烏も、その一員だ。
妖怪の世界でも異質なこの者たちは、夢を抱くということの味わいを、一度も知ったことがなかった。ところがある日、庫拉烏は、人間たちが「歌声」と呼ぶものをふと耳にする。麗しい山河のようでもあり、雄大な海原のようでもあるその声は、庫拉烏の心の奥底に眠っていた渇望を呼び覚ました。
夢を喰らう妖怪の心にも、夢の種が宿りうるなんて、彼は思ってもみなかった。この瞬間から、庫拉烏は、誰の夢も尊重されるべき大切な宝物なのだと固く信じるようになった。誰の夢も決して喰らわないと心に決め、その清らかで気高い信念を守り続けている。
しかし、一人前の妖怪となるための、夢を喰らう儀式をいつまでも果たせずにいた庫拉烏は、一族の恥とされ、同族から疎まれた。そこで彼は、迷うことなく夢を追う旅へと踏み出し、故郷を離れて人間の世界に溶け込んだ。そしてこの旅の中で、自らが存在する本当の意味を探し求めていく……
星々のように果てしなく、きらびやかな幾億もの人間たちの夢。その中に、彼の居場所はあるのだろうか?
これからの活躍に、どうぞご期待ください。