「もうおしまいだ! Garu……人殺しになっちゃったよぉぉ!」少女はおろおろとほっぺたをぐにぐにこね回しながら、声を張り上げて泣きわめいた。
いかにも無邪気でかわいらしい顔をしたこの少女の名は、月沢Garu。紺碧に澄みわたる海の国からやってきた。家で貝殻アンテナをいじっていたとき、偶然にも人間界の(子ども向け)チャンネルを受信してしまった彼女は、毎晩六時に放送されているアイドルアニメにすっかりハマり、歌って踊る夢を追いかけて、単身人間界に乗り込むことを決めた——ところが、経験ゼロなうえに常識も足りないせいで、オーディションでは惜しくも落ちてばかりいる。
その日、海辺で貝殻を蹴飛ばしてストレス発散をしていた彼女は、自分を見るなり目が釘付けになった、奇妙な人間に出くわした。その人間はいきなり彼女を指さすと、「タコ娘だ!」と大声で叫んだ。タコに間違われるのが何より嫌いなGaruは、怒りのあまり触手を一本残らずピンと突っ張らせた。Garuはタコみたいながさつな荒くれ者なんかじゃない! Garuは200年生きてる、繊細で上品なクラゲなんだから!
怒りゲージが振り切れたGaruから無意識のうちに放たれたクラゲ毒は、主を守る蜂の群れのごとく、その人間の口と鼻へとなだれ込んだ……。悪いニュースは、その人間が案の定あえなくお陀仏になったこと。良いニュースは、少なくともそのお陀仏っぷりに、学術的な価値と芸術性がたっぷりあったことだ。
その人間のポケットから、「VirtuaReal」と印刷された小さな紙切れと、ゼロコーラが一缶すべり落ちた。気が動転していたGaruはそんなものを調べる余裕もなく、一目散に逃げ出した。去り際に、そのコーラだけはちゃっかりいただいていったが……これが意外とおいしかった。
目撃者もいないし、これで一件落着——と思っていたのに、まさか数日後、その人間が損害賠償の請求書を手に、ぴんぴんした姿でGaruの前に現れるとは……。請求書に記された天文学的な数字に驚いたGaruは、危うくまたしても、ほとばしるクラゲ毒を抑えきれなくなるところだった。アイドルになるために海の国の金貨をとっくに使い果たしていた彼女は、財政の大ピンチに陥ってしまった!
幸いにも、VirtuaRealの社員を名乗るこのお人好しは過去のことを水に流し、働いて弁償すればいいと、太っ腹にも許してくれた——こうして月沢Garuは、なんだかよくわからないうちに、アイドルになるという夢を叶えたのだった!
……おまけに、莫大な借金と、事務所の冷蔵庫のゼロコーラの、毎週届くとんでもない額の請求書まで背負い込んで……
これからの活躍に、どうぞご期待ください。